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大阪高等裁判所 昭和58年(ネ)638号 判決

控訴人

協同組合新大阪センイシテイー

右代表者代表理事

米田喜一

右訴訟代理人

岸本亮二郎

被控訴人

日本貯蓄信用組合

右代表者代表理事

米田鹿男

右訴訟代理人

松田安正

華学昭博

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一  申立

一  控訴人

1  原判決を取消す。

2  被控訴人は控訴人に対し、控訴人が有限会社生興商店との間で、原判決添付物件目録(一)、(二)記載の建物につき、本判決添付登記目録記載の所有権移転登記手続をすることを承諾せよ。

3  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文と同旨

第二  主張と証拠〈省略〉

理由

一〈省略〉

二そこで、被控訴人の主張について判断する。

1  被控訴人の主張第1項について

弁論の全趣旨によると、被控訴人の主張するとおり、裁判所の保全処分が発せられていることが認められるが、前記事実によると、本件特約は、有限会社生興商店に対する和議の申立がなされたことによつて効力を生じ、その後になされた右保全処分によつて、その効力を失うものとは解されないから、右主張は採用できない。

2  被控訴人の主張第2項について

前記事実によると、被控訴人は、仮登記担保法四条一項に定める抵当権者に該るものと認められるところ、控訴人は、本件仮登記担保権を実行するに際し、被控訴人に対し、同法五条一項の通知をしていないことは当事者間に争いがない(なお、本訴提起をもつて、右通知と同視することはできない。)。そうすると、前記のとおり、控訴人が有限会社生興商店に対し、本件代物弁済予約完結の意思表示及び同法二条一項の通知をなした日から二ケ月(清算期間)を経過したとはいえ、控訴人は被控訴人に対し、右代物弁済予約完結による本件(一)(二)の建物の所有権取得を対抗することはできないと解するのが相当である。けだし、このように解しないと、仮登記担保権者は債務者に対してした清算金がない旨の通知の内容を遅滞なく後順位担保権者に通知して、清算期間、担保物の見積価額、被担保債権額等を知らしめ、後順位担保権者はその見積価額等を不当とするとき、清算期間内に担保物の競売を申立てることによつて仮登記担保権者の仮登記に基づく本登記の請求を阻止し、民事執行法による売却、配当が実施されるものと定める仮登記担保法五条、一二条、一五条等の趣旨を没却することになるからである。(なお、被控訴人は昭和五七年一〇月八日本件(一)(二)の建物につき競売の申立をし、同月一三日競売の開始決定がされたことは、当事者間に争いがない。)

そうすると、その余の点について判断するまでもなく、控訴人の被控訴人に対する本訴請求は失当である。〈後略〉

(石川恭 仲江利政 蒲原範明)

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